皆さんは松山鯛めしと宇和島鯛めし。
この2種類の「鯛めし」をご存知でしょうか?
どちらも愛媛県を代表する郷土料理で、連日行列が出来るお店もあるほどの人気です。
「鯛めし」とひとくちに言っても種類はいくつかあり、一般的に有名な作り方は土鍋に鯛、米、だし汁、薄口醤油などの調味料を入れて作るものでしょう。しかし愛媛県には大きく分けて2つの鯛めしがあります。
それが冒頭言った「松山鯛めし」と「宇和島鯛めし」なのです。どちらも美味しいのは間違い無いのですが、同じ鯛めしと謳っているのにも関わらず、全く別物なんです!
というわけで今回は愛媛県を代表する松山鯛めしと宇和島鯛めし。どちらが美味しいのか?どちらを食べるべきなのか?両方の鯛めしの食べ方や名店についても書きますので、ぜひ愛媛旅行を計画される際の一助になればと幸いです。
松山鯛めしと宇和島鯛めしの違い
では早速本題に入ります。
松山鯛めしと宇和島鯛めしの違い。
それは、ぜんぶです。
は?どういうこと?!
そうなんです。ぜんぶ違うんです。ではどういう違いがあるのか?
ビジュアルが違う
まず、ビジュアルが全然違います。
こちらが松山鯛めしです。どことなく皆さん見たことのあるビジュアルだと思います。
あぁ、これこれ!これが鯛めしでしょ?
というビジュアルをしていますね。
続いてこちらが宇和島鯛めし。
ほらね、全然ビジュアルが違うでしょ?
松山鯛めしは釜めしですが、宇和島鯛めしは卵かけご飯のようなビジュアルなんです。
同じ「鯛めし」と名乗っていても全然ビジュアルが違うんです。面白いですよね!
当たり前に味が違う
先ほどビジュアルの話をしましたが、当然味も違います。松山鯛めしは皆さんが想像する鯛めしの味にかなり近いです。程よく味が染みた釜飯に鯛のダシ、昆布のダシが効いています。鯛の旨みがこれでもかと感じられる一品です。また炊き加減が絶妙なのか、鯛の身もパサパサしておらず、噛めば噛むほど味が押し寄せてくる感覚になります。
一方、宇和島鯛めしはごはんに鯛の刺身とタレをかけて食べます。ほんのり甘塩っぱさを感じるタレが特徴で、まさに卵かけご飯を食べているかのような手軽さがあります。ただし、宇和島で獲れた鯛を使用しているからこそ淡白な鯛の刺身でも、しっかりとした味わい深さを感じます。
どうやって食べるの?
まずは松山鯛めしの食べ方からいきます。店によって食べ方は違いますが、愛媛で有名な鯛めし料理屋「秋嘉」の食べ方は以下の通りです。
①まずはそのまま釜に入った鯛めしを食す
②薬味(大根葉、三つ葉、もろみ)などを入れる
③薬味などを入れた状態でお茶漬けにして食す
※店によって食べ方は異なる場合があります
続いて宇和島鯛めし。こちらも食べ方がありますので見ていきましょう。
①生卵の入った醤油ダレをよくかき混ぜる
②醤油ダレの中に鯛の切り身と海藻、薬味を入れる
③温かく炊かれたご飯に②で漬けた鯛の切り身を入れる
④その上から醤油ダレをかける
食べ方一つとっても松山鯛めしと宇和島鯛めしでは大きく違うのです。
同じ県内で、なぜこうも変わるの?
ではなぜ、同じ愛媛県内で「鯛めし」の解釈がこんなにも変わるのでしょうか?いくつかの文献を参考にするとそれぞれの鯛めしの歴史が見えてきます。
松山鯛めしはかなり古く、神功皇后の朝鮮出陣の頃には作られていたそうです。神功皇后がいた時代は西暦にすると169年から269年です。つまり1,800年以上の歴史があるのです。神功皇后が朝鮮出陣する際、松山市北条地区の鹿島明神に戦勝祈願として漁師たちから献上した鯛を吉兆と喜び、その鯛でご飯を炊いて供えたことで普及したとされています。
他方、宇和島鯛めしの成り立ちも古く、南北朝時代から江戸時代にかけて日振島を根拠地としていた伊予水軍が船上で魚をつまみに酒盛りをしていました。その酒の残った茶碗にご飯を入れ、醤油と刺身を混ぜ合わせたのが始まりのようです。南北朝時代といえば1336年から1392年の半世紀余り続いた時代で、こちらも700年近い歴史があります。
時代背景や成り立ちは違いますが、どちらも大昔から食されてきた、まさに県民食ということなのです。
それと、これは僕が個人的に思うことですが、松山と宇和島の位置関係も起因しているように思います。松山と宇和島は特急電車で1時間22分かかります。距離にして90km以上。現代でこそ1時間程度で行くことが出来ますが、大昔の感覚では大いに違うことでしょう。松山は中予地方、宇和島は南予地方で歴史や食文化も変わっていておかしくありません。
参考文献:農林水産省
どっちが美味しいの?!
さて、題名のお答えをします。
どっちが美味しいの。
それは結論、人による。ということです。
笑わないでください。ちゃんと説明します。
松山鯛めしは王道感のある鯛めしです。ザ・鯛めし!中には自宅で作ったことがあるという人もいると思います。
一方で宇和島鯛めしの場合はかなりレアです。新食感・新感覚とはこのことです。なんとも形容し難い味の醤油ダレは一度食べると病みつきになります。
同じ鯛めしでも似て非なるものなので、2日連続で食べたとしても飽きないです。全く別物の鯛めしだと思っていいと思います。
とにかく自分の舌で試してみる方がいいと思います。
2つの鯛めしを味わえる名店は?
ここまで読んで2つの鯛めしが気になった方へ私がオススメするお店をご紹介します。まずは松山鯛めしのお店から。
松山鯛めし 秋嘉(あきよし)
松山市内に2店舗を構える「松山鯛めし秋嘉」というお店です。ここは松山市最大の繁華街である大街道に本店を置き、道後温泉にもお店があります。松山鯛めしといえば、秋嘉。というほどには知られたお店です。
ここのお店はなんと宇和島鯛めしも食べることが出来ます。素晴らしい守備範囲と言わざるを得ませんが、まずは松山鯛めし膳(¥2,350)を頼んでみてください。
これが松山鯛めし膳です。値段はそこそこ張りますが、御膳というくらいですから土鍋のほかに刺し盛り、天ぷらなどバラエティ豊かなラインナップが運ばれてきます。
さてお目当ての鯛めしを食べ方に沿って食べていきます。まずは土鍋から純粋な鯛めしだけをよそって食べてみます。鯛のダシが染み込んでおり、深い味わいが口内に広がります。土鍋にはおこげも付いており、食感も楽しいです。もはやこれだけで全部食べ切れる自信しかありません。
続いて薬味を入れてみます。個人的には三つ葉がいいアクセントになっており、好きでした。ただし、あまり大きな変化はないかもしれませんね。もろみは好き嫌いが分かれるかと思われます。
最後にお茶漬けにして食べてみましょう。わさびを入れて食べてみると最高です。鯛の旨みとダシが、より強く感じられます。鯛の刺身はそのまま食べても良いのですが、オススメは熱々のお茶漬けに入れて半ナマで食べることです。ちょうど良く食感も残しながら鯛の旨みが凝縮されており、鼻に抜ける上品な香りが最高。
そこそこ値は張りますが、ここにさえ行けば間違いないという名店です。
■松山鯛めし 秋嘉(あきよし)
・住所:松山市大街道3-5-1
・営業時間:11時00分~14時30分
17時30分~20時00分
・定休日:火曜日
・支払方法:クレカ・PayPay可
・公式サイト:こちら
かどや
続いては宇和島鯛めしの名店。愛媛県内に8店舗を運営する「かどや」をご紹介します。こちらのお店は宇和島だけでなく、東京の虎ノ門や西麻布にも出店しています。個人的に東京でも食べられるというのはデメリットでしかない気もしますが、美味しい宇和島鯛めしを食べるならオススメです。
今回は宇和島市の弁天町店を訪れました。店内は広々としており、駐車場もしっかり台数が確保されているのでクルマでも安心です。
宇和島鯛めしをオーダー。値段は1,710円(税別)です。松山鯛めしと比べると安いですね。10分ほどして運ばれてきます。
まずは生卵が入ったタレに鯛の切り身を入れていきます。同時に備え付けの海藻類も入れ、軽くかき混ぜます。程よく浸った鯛の切り身と海藻を取り出して、注ぎ口からタレをご飯にかけていきます。若干甘めのタレと卵黄の濃厚な口溶け、そして鯛のムッチリした身の美味しさ。すべてが互いの良さをしっかりと表現しており、茶碗を置くことを忘れさせます。
かどやではご飯がおかわり自由。粒がきちんと立っているご飯と宇和島鯛めしの相性は抜群で、おかわり必須です。
東京でも食べることが出来ますが、ぜひ本場の味を本場で味わって欲しいです。
■かどや
・住所:宇和島市弁天町1-4-6
・営業時間:11時00分~14時00分
17時00分~20時00分
・定休日:月曜日
・支払方法:クレカ可/電子マネー不可
・公式サイト:こちら
まとめ
さて、ここまで松山鯛めし・宇和島鯛めしの歴史や食べ方、名店のご紹介をしてきました。先述した通り、両方とも鯛めしですが、その成り立ちや食べ方は全く違います。今年こそは愛媛に遊びへ行きたいという方は、ぜひ両方を味わってみてください。
そして愛媛の良さを知ってください。
全国でもトップクラスに楽しい県です。